💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

営業システムと経理システムのサイロ化。分断されたプロセスの間にある「見えない区間」

営業のツールは、たいてい受注で終わります。
商談が進み、確度が上がり、受注になる。
おめでとうございます。
画面の上では、その案件は完了です。成約率が上がり、今月の実績に加わります。
ここで、記録は止まります。
画面が完了と表示すると、その案件は、頭の中でも完了になります。
次の商談へ移ります。そのあとの工程は、別の人の仕事になり、別の場所で管理されます。
けれど、会社のほうは、止まりません。
受注したあと、見積を出します。
納品します。
請求書を出します。
入金予定日が来ます。
入金されます。
ここまで来て、はじめて資金になります。
そして、この区間のほうが、たいてい長い。
営業の画面には、この区間が映っていませんでした。
映っていない、というより、別の場所で管理されていました。
見積は別の書類。
請求は経理の担当。
入金の確認は、通帳を見る人がいる。
それぞれは、きちんと動いています。ただ、営業の画面から、その先が見えない。そして、経理の画面からは、その手前が見えません。
請求書に書かれているのは、金額と期日です。
その案件が、どういう経緯で決まったのか。どんな条件で話がついたのか。
次に何が控えているのか。そこは、営業の側にあります。
同じ1件のことを、2つの部署が、それぞれ別の断片として持っている。
つないでいたのは、たいてい、人の記憶でした。
記憶は、よく働きます。よく働く分、つながっていないことが、表に出てきません。
覚えている人が休んだ日にだけ、切れていたことが分かります。
つないでいない状態でも、仕事は回ります。回りますが、同じ内容を2回入力することになります。
受注の内容を、営業の画面に入れる。同じ内容を、請求の書類にもう一度書く。
2回書けば、2回間違える機会があります。
そして、どちらが正しいのかを、あとから判断する材料がありません。
どちらの数字も、それぞれの画面の中では、正しく見えます。
食い違いは、2つを突き合わせたときにだけ、現れます。
そして、突き合わせることは、誰の仕事でもありませんでした。
受注後プロセスの統合とキャッシュフローの可視化。アラート機能によるリスク管理

この区間をつないだのが、経営を見えるようにするための機能です。
受注した案件から、見積を作れます。
見積から、請求を作れます。
請求には、入金予定日が付きます。
入金されたら、消し込みます。
つなぐ、といっても、新しい書類を作るわけではありません。
受注のときに入力した内容が、そのまま見積の下書きになる。
見積の内容が、そのまま請求の下書きになる。
書き写す作業を、無くしただけです。
同じ画面の中で、受注から入金までが1本になります。
そして、この1本がつながると、別のものが見えるようになります。
今後の資金の動きです。
いま抱えている請求と、その入金予定日。
これから出ていく支払いの予定。
いまの残高。
これらを並べると、今後6か月分の残高の見通しが引けます。
引いてみると、線は水平にはなりません。
上がったり、下がったりします。
そして、ある月だけ、大きく下がることがあります。
支払いが重なる月。
入金が翌月にずれる月。
まとまった支出が予定されている月。
その月に、警告を出すようにしました。
警告といっても、大げさなものではありません。
その月の残高が、決めておいた水準を下回りそうだ。
それだけを、静かに知らせます。
大事なのは、何か月前に知らせるかでした。
前月に知らされても、打てる手は限られます。
3か月前なら、まだ選べます。
入金を早めてもらう交渉をする。
支払いの時期を調整する。
借り入れの相談に行く。
どれも、時間があるときにしかできません。
数字を見せることの価値は、正確さより、早さのほうにありました。
見通しは、外れることがあります。
入金はずれますし、商談は動きます。
それでも、3か月前の粗い見通しは、直前の正確な数字より、役に立ちます。そこから打てる手の数が、違うからです。
確度別予測による予実管理と、予実差異分析。データ統合がもたらすインサイト

見通しに使う数字には、確からしさの差があります。
すでに請求を出したものは、ほぼ確実です。
受注済みで、まだ請求していないものは、その次。
商談中のものは、まだ分かりません。
だから、確度によって分けて表示しました。
確実なものだけの線と、商談中の分も入れた線を、両方引きます。
2本の線の開きが、その会社の不確実さです。1本にまとめると、どこまでが確かなのかが見えなくなります。
この画面を作って、気づいたことがあります。
営業の数字と、資金の数字は、同じものを別の角度から見ています。
受注が増えれば、いずれ資金は増えます。けれど、増えるまでに時間がかかります。その時間の長さは、業種によって違います。支払い条件によっても違います。
営業が「今月は良かった」と思っている月と、資金が楽になる月は、一致しません。数か月ずれます。このずれを、感覚で持っている経営者は多いと思います。ただ、それを数字で確かめる方法が無かった。
もうひとつ、案件ごとに見えるようになったことがあります。
受注した金額と、実際に入った金額が違うことがあります。
値引きが入った。
一部が翌期にずれた。
追加の作業が発生した。
以前は、受注の記録と入金の記録が別だったので、その差を追うのが大変でした。いまは、1本でつながっているので、どこで、どれだけ変わったのかが見えます。この差は、次の見積のときに効きます。
受注額と入金額の差が、いつも同じ方向に出ているなら、それは偶然ではありません。見積の作り方に、癖があるということです。
その癖は、案件を1件ずつ見ていても分かりません。並べて、はじめて見えます。
第1話から、この連載でずっと同じことを書いています。
1件ずつ見ても分からないものが、並べ替えると見える。
営業の話でも、資金の話でも、同じでした。
ヒューマンインザループによる入金消し込みと、SFAのあるべき姿の再定義

入金の消し込みについても、割り切りがあります。
自動で完全に一致させることは、目指していません。
振込の名義が略されている。
複数の請求がまとめて入金される。
手数料が引かれている。
そのままでは、一致しません。
だから、候補を出すところまでを機械がやり、最後の確認は人がします。
第20話の保留と、まったく同じ考え方です。
決めきれないものを、決めきれないまま持てるようにしておく。
この形が、いちばん長く使われます。
この機能は、営業のツールとしては、少し外側にあります。
新規のお客様を増やすものではありません。
商談を進めるものでもありません。
作るかどうか、迷いました。
決め手になったのは、「受注しました」で画面が止まることの不自然さでした。会社にとって、受注は途中経過です。その先に、納品があり、請求があり、入金があります。その全部が終わって、はじめて1件が完了します。
営業の画面だけが、途中で完了と表示していました。
受注は、通過点です。
通過点を終点として表示していたことが、この件のすべてでした。
そして、終点の表示には、力があります。
画面が完了と言えば、頭の中でも完了になる。
この話の最初に書いたとおりです。
ツールは、仕事を映しているようでいて、仕事の区切りを、決めています。
売上が立っても、入金されるまでは、資金になりません。
当たり前のことです。
当たり前のことが、画面の上では、切れていました。
切れていた理由も、はっきりしています。
営業のツールは、営業のために作られます。
経理のツールは、経理のために作られます。
どちらも、自分の仕事の範囲で完結しています。
会社のほうだけが、その範囲をまたいで動いていました。
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次回予告
第27話「乗り換えられなかった理由」
他社の道具から書き出したファイルを、取り込む。
取り込みは、成功しました。
会社名の隣は、空でした。
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リストルは、今日もどこかを直しています。
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