リストル:フォームリーチツール開発奮闘記 あ と 3 秒― まだ終わっていない、あるツールの開発記 ―第15話「深夜3時も、昼1時も、同じだった」

リストル:フォームリーチツール開発奮闘記 あ と 3 秒― まだ終わっていない、あるツールの開発記 ―第15話「深夜3時も、昼1時も、同じだった」 フォームリーチ開発日誌

これは、一つの営業支援ツールが少しずつ賢くなっていく、いまも続いている記録です。

派手な話は、ほとんど出てきません。
天才も、閃きも、一夜にして世界が変わる瞬間もありません。

あるのは、うまくいかなかった一件を実際に開いて、「なぜだろう」と眺めるところから始まる、ずいぶん地味な時間の積み重ねだけです。

書いていて少し気恥ずかしいのは、出てくる間違いの多くが、笑ってしまうほど単純なことです。

けれど、その単純な間違いを一つずつ拾っていくうちに、成績は「200社に2社」から「5社に1社」まで動きました。
改良の回数は、300を超えています。

『リストル:フォームリーチツール改善奮闘記』によろしければ、お付き合いください😊

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障害切り分けの定石。外部環境の仮説検証から導く自社システムのボトルネック

犯人は誰だ?
容疑者を、1人ずつ消していく話です。

これは、第5話の裏側にあたります。
(第5話はこちら👇️)

あのとき、諦めた2000件を秒数だけで並べて、160秒から200秒に固まっているのを見つけました。

その前に、実は何日か、遠回りをしています。
どうやって容疑者を消していったのか。
その手順のほうを、今回は書いておきます。

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■ トラブルシューティングの定石。インフラや外部環境の仮説検証

現象は、はっきりしていました。
一定の割合で、途中で止まる。
止まったものは、諦めて次へ進む。
毎晩、同じくらいの割合で起きます。

最初に疑ったのは、相手のサイトでした。

【容疑者その1】特定のサイトが重い。
いかにもありそうな話です。
止まった会社の名前を集めて、数えてみました。
もし特定のサイトが原因なら、同じ会社が何度も出てくるはずです。

出てきませんでした。
2000を超える、まったく別々のサイトで起きていました。
同じ会社が2度出てくることは、ほとんどありません。
これで、1人目が消えました。

もっとも、消すまでには半日かかりました。
2000件分の会社名を並べて、同じ名前がないか数える。
ただそれだけの作業です。

やっているあいだは、「たぶん、いくつか固まって出てくるだろう」と思っていました。
出てこないと分かったときは、少しがっかりしました。
容疑者が消えるというのは、手がかりが1つ減るということでもあります。

【容疑者その2】回線の混雑。
これも、ありそうな話です。

昼間は世の中全体が混みます。夜のほうが空いているはずです。
止まった割合を、時刻ごとに並べてみました。

深夜3時。
昼1時。
夕方6時。

どの時間帯でも、割合はほとんど同じでした。
これは、少し意外でした。

混雑が原因なら、時間帯で差が出ないはずがありません。
差が出ないということは、混雑のせいではない。
2人目も、消えました。

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■ 障害の切り分けで残ったもの。外部要因の排除から「自社設定」へ

【容疑者その3】特定の機械の調子。
10台のうち、どれか調子の悪い台があるのではないか。
これも、調べました。

台ごとに、止まった割合を出してみます。
10台すべてで、ほとんど同じ割合でした。
1台だけ悪いということは、ありませんでした。
全部が、等しく同じように止まっていました。
3人目も、消えました。

このとき、少しだけ引っかかりました。

10台は、まったく同じ機種ではありません。
置いてある場所も、つながっている回線も違います。
それなのに、割合がほとんど同じになる。
ばらばらの環境で、同じ結果が出るというのは、環境のせいではない、ということです。

ここまで来て、なんとなく、外側には答えが無いような気がしてきました。
ただ、まだ確信はありません。残った容疑者を、もう1人だけ調べました。

【容疑者その4】相手からの拒まれ方。
訪問そのものを断られているのではないか。
これも考えました。

もしそうなら、拒まれた記録が残るはずです。
画面に、そう書かれたページが出るはずです。

止まった会社のページを、実際に開いて確かめました。
ふつうの問い合わせページが、ふつうに表示されました。
拒まれてはいませんでした。
4人目も、消えました。

ここまでで、4日ほどかかっています。
外側の容疑者が、全部いなくなりました。

相手のサイトでもない。
回線でもない。
こちらの機械でもない。
拒まれてもいない。

残っているのは、1つだけです。
あっ、と思いました。

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残ったのは、自分たちが決めた数字だった。
「どのくらい待つか」を決めている、あの設定値です。
外の世界に原因がないのなら、全部を同じところで切っているのは、こちら側しかありません。

ここまで来て、ようやく、「何秒で諦めたか」を並べてみる気になりました。
その先に何があったかは、第5話に書いたとおりです。

この回で書いておきたいのは、順番のことです。
最初から秒数を並べていれば、4日は要りませんでした。
ただ、あのときの自分には、秒数を並べてみるという発想がありませんでした。外側を疑っているうちは、思いつかないのです。
外側の容疑者を1人ずつ消していって、誰もいなくなって、はじめて内側を見ました。

■ データ分析の罠。絶対数(件数)と相対数(割合)の混同

ついでに、間の抜けた話も書いておきます。

時間帯ごとの集計を出したとき、最初の表では、深夜の件数だけが極端に少なく出ました。
「やはり夜は空いている」と、しばらく喜びました。

単に、深夜に走らせている台数が少なかっただけでした。
件数ではなく割合で見なければ、何の意味もありません。
割合で出し直したら、きれいに横並びになりました。
喜んでいた半日は、まるごと無駄でした。

この手の間違いは、そのあとも何度かやりました。
件数で比べるか、割合で比べるか。
条件が揃っていない相手を件数で比べると、だいたい、都合のいい結論が出ます。
都合のいい結論が出たときは、いちど疑ったほうがいいと、このとき学びました。

もっとも、学んだからといって、すぐに身につくわけではありません。
この記録の後半でも、同じような転び方を、また1度しています。

壊れていたのではない。
決め方が、短すぎただけだった。

容疑者を消していく作業は、やっているあいだ、何も進んでいないように感じます。「これも違った」「これも違った」が続くだけです。
現場に途中経過を聞かれても、報告することがありません。
「どうですか」
「サイトのせいではありませんでした」
「うん、それで?」
「回線のせいでもありませんでした」
「……そう」

こういうやりとりが、4日続きました。
けれど、消し終わったとき、残っているものが答えでした。

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■ 根本原因(ルートコーズ)を直視するための、逃げ道をなくすプロセス

この進め方には、もう1つ良いところがありました。
消していく途中で作った集計が、そのまま、あとで役に立ったのです。

時間帯ごとの割合。
台ごとの割合。
サイトごとの重なり。

どれも、このとき初めて出したものでした。
それまでは、成績を全体でしか見ていませんでした。

分けて見る癖は、この4日でつきました。
そのあとの回で何度も出てくる「並べてみる」も、もとをたどれば、ここから来ています。
そして、いちばん最後まで残るのは、たいてい、自分が置いたものです。

外側は、いくらでも疑えます。
相手が悪い、環境が悪い、ツールが古い。
どれも、調べるのは気が楽です。

自分が置いた数字を疑うのだけは、最後まで手が伸びませんでした。
伸びなかった理由も、いまなら分かります。
それを疑うということは、これまで動いていたものが、ずっと間違っていたと認めることだからです。

4日かけて外側を全部消して、ようやく、そこに手が届きました。
この進め方を、そのあとも何度か使いました。

困りごとが起きたとき、まず、疑わしいものを紙に書き出します。
3つでも、5つでも、思いつくだけ書きます。
そして、消せるものから順に消していきます。

消すのは、たいてい簡単です。
数えれば分かるものが多いからです。
難しいのは、最後に残ったものを認めることでした。
残ったものは、たいてい、いちばん認めたくないものです。

この回のように、外側が全部消えてしまえば、認めるしかありません。
消していく作業は、答えを見つけるためというより、逃げ道をなくすための作業でした。

(つづく)


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