💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

非構造化データのブラックボックス化。商談メモに埋もれるインサイトと属人化の課題

この回は、直した話ではありません。作った話です。
ただ、作るときに考えたことは、これまでの回と、そう変わりませんでした。
出したものが、どこへ行くのか。出さなかったものは、どこへ消えるのか。
商談から戻ると、メモが残ります。
きれいなメモではありません。
聞いた話の断片。
相手が言った一言。
気になった表情。
次に何をするか、書きかけたもの。
このメモは、たいてい、そのままです。
きちんと整理する時間は、ありません。整理しないまま、次の商談に行きます。
ベテランは、このメモから、いろいろなことを読み取ります。
この案件は、そこそこ進んでいる。
ただ、決裁の話が出ていないから、まだ先だろう。
競合の名前が出たのは、少し危ない。
来週までに、あの資料を出しておいたほうがいい。
これは、経験です。
何百件の商談を通ってきた人の中に、蓄積されているものです。
そして、本人には、それが特別なことだという自覚がありません。
聞いてみても、「なんとなく」としか返ってきません。
なんとなく、は嘘ではありません。
本人の中では、判断が一瞬で終わっているからです。途中の式は残らず、答えだけが出てきます。その読み方は、その人の中にしかありません。
チームの他の人には、同じメモが、ただのメモに見えます。
そして、書いた本人にも、1か月後には見えなくなります。
そのとき何を感じたのかは、メモに書かれていません。書いてあるのは、断片だけです。
つまり、この経験は、本人の中でも、時間とともに消えていきます。
引き継ぎのときに困るのも、ここでした。
担当が変わると、記録は引き継がれます。記録の読み方は、引き継がれません。
そして、メモは、そもそも書かれないことがあります。
書く時間がない。
書いても誰も読まない。
書き方が決まっていない。
書かれなかったメモは、その商談が無かったのと同じことになります。
商談そのものは、行われています。
時間も、移動も、使われています。
記録に残らなかった分だけ、使った時間が、どこにもつながりません。
自然言語処理(NLP)によるSFAへのシームレス連携。「使われない機能」を避けるアクション駆動設計

この機能は、そこを埋めようとしたものです。
商談のメモを、そのまま貼り付ける。
整形しなくていい。箇条書きでなくていい。
貼り付ける、という形にこだわりました。
項目に分けて入力させると、入力の作業になります。
作業になると、後回しになります。
そのまま貼れるなら、移動中でも、次の商談の前でも、片付きます。
狙いは、精度ではありません。書かれる回数です。
すると、こういうものが返ってきます。
要点。何が話されたのか。
受注の確度。どれくらい進んでいるか。
失注しそうな理由。危ないと思われる点。
次の一手。何をすべきか。
次回のフォロー日。いつ動くべきか。
ここまでなら、気の利いた要約のツールです。
そして、気の利いたツールは、感心されたあと、静かに使われなくなります。
ここで、私たちがこだわったのは、出力の形ではありませんでした。
出したあと、どこへ行くかのほうです。
要点を出して終わりなら、便利な道具止まりです。
読んで、なるほどと思って、閉じる。それで終わってしまいます。
だから、つなぎました。
要点は、その会社の活動履歴に記録されます。
誰が見ても、あとから追えます。
次回のフォロー日は、予定として登録されます。
その日が来ると、通知されます。
次の一手は、やることとして残ります。
確度は、その会社の状態に反映されます。
このつなぎ込みが、実は作業の大半でした。
要点を出すところまでは、そう難しくありません。難しいのは、出したものが、明日の行動に変わるかどうかです。
読んで終わる情報は、増えるほど負担になります。
予定になった情報だけが、実際に動きます。
だから、出力の項目も、「どこへ入るか」から逆算して決めました。
入れる先のない項目は、作りません。
AIのハルシネーションを排除する事実ベースの要約。一次情報(元データ)を保持するシステム要件

出力の項目を決めるとき、最初はもっと多くの項目を考えていました。
相手の性格。話の温度。押すべきか引くべきか。
どれも、あれば面白い項目です。
けれど、面白い項目は、読んで終わりになります。
予定にも、記録にも、状態にも入らない。
そこで、削りました。残したのは、どこかへ入る5つだけです。
作りながら、いちばん議論したのは、確度の扱いでした。
AIが「この案件は受注しそうです」と言ったとして、それを、どこまで信じるか。
はっきりさせたのは、次の点です。
この確度は、予測ではありません。
メモに書かれていることの整理です。
- 決裁者の話が出ているか。
- 予算の話が出ているか。
- 時期の話が出ているか。
- 競合の名前が出ているか。
そういう要素が、メモの中にあるかどうかを見ています。
だから、メモに書いていないことは、反映されません。
書いていない前提のことは、AIには見えません。
見えていないものを、見えているように言わない。
そこだけは、崩さないことにしました。
そこは、はっきり伝えるようにしました。
「AIが受注を予測しました」と言えば、格好はつきます。
けれど、それは本当のことではありません。
第30話でも同じ話が出てきますが、言えることと、言いたいことは、区別しています。
もうひとつ、書き換えないことを決めました。
AIが整理した内容は、提案として出ます。そのまま登録することもできますし、直すこともできます。
元のメモは、必ず残ります。
整理された結果だけが残ると、何が実際に話されたのかが、分からなくなります。
整理は、要約です。
要約は、必ず何かを落としています。
落とされたものの中に、あとで効く一言が入っていることがあります。
相手が最後にぽつりと言ったこと。話の本筋ではなかった雑談。
そこに、次の商談の糸口があったりします。
AIは、本筋を拾います。本筋でないものは、落とします。
だから、元のメモを残しました。
整理された結果は、入口です。元のメモは、その奥にあります。
データドリブンな営業プロセスの確立。入力の「正直さ」を担保するデータガバナンス

この機能を使った人の反応で、印象に残ったものがあります。
「自分が何を聞いていなかったか、が分かる」
要点が出てくると、そこに入っていない項目が、目立ちます。
予算の話をしていない。
決裁の流れを聞いていない。
次の日程を決めていない。
出てきた答えより、出てこなかった項目のほうが、役に立つ。
これは、作る前に想定していなかったことでした。
整理するツールのつもりで作ったものが、振り返る鏡としても使われていました。ツールの使い道は、作った側が決め切れるものではないようです。
使い方についても、決めたことがあります。
この機能は、評価には使いません。
確度が低いと出たからといって、その担当者の成績にはしない。
そうすると、メモが変わってしまうからです。
良く見せるためのメモを書き始めると、記録としての価値が無くなります。
書いたとおりに整理される。整理された結果で、責められない。
この2つが揃わないと、そもそも、ありのままのメモが集まりません。
精度は、あとからでも上げられます。一度失われた正直さは、機能では取り戻せません。ツールの精度より、ツールが置かれる場所のほうが、大事でした。
ベテランが頭の中でやっていたことを、チームで見えるようにしました。
ベテランの代わりをさせたわけではありません。
読み方を、共有できる形に置き換えただけです。
読み方が共有されると、チームの中で、同じ言葉で話せるようになります。
確度が低い、と言ったときに、何を見てそう言っているのかが、揃う。
揃うと、相談が早くなります。
商談から戻って貼り付けたメモは、その日のうちに、次の予定になります。
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次回予告
第26話「受注の、あと」
受注しました。おめでとうございます。
けれど、その数字は、まだ画面の中にあります。
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リストルは、今日もどこかを直しています。
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