リストル:企業データベース開発日誌 第21話「13桁の正解」〜名寄せアルゴリズムの限界を突破する法人番号。ユニークIDが実現するデータ統合とヒューマンタスクの削減〜

リストル:企業データベース開発日誌 第21話「13桁の正解」 企業DB開発日誌

💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

名寄せアルゴリズムの限界。属性データの「表記ゆれ」が引き起こす目視確認コストの増大

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同じ会社かどうかを、機械に判定させる。
前回は、その仕組みの話でした。

会社名を整えて比べ、住所を比べ、電話番号を比べる。
似ている度合いを点数にして、確信があれば統合する。
この方法は、うまく動きます。実際、ほとんどの会社は、これで正しく判定できます。

ただ、限界があります。
限界といっても、精度の話ではありません。手がかりそのものの性質の話です。

会社名は、重複します。
同じ名前の会社は、全国にいくつもあります。
まったく無関係な会社が、たまたま同じ名前を名乗っている。
珍しいことではありません。

住所は、変わります。
移転すれば、変わります。同じ会社なのに、古い住所と新しい住所が両方ある。

電話番号は、使い回されます。
会社が変わっても、番号が引き継がれることがあります。逆に、同じ会社が番号を変えることもあります。

つまり、どの手がかりも、「絶対にこうだ」とは言い切れません。
だから点数にして、複数の手がかりを重ねます。重ねれば、確からしさは上がります。上がりますが、100にはなりません。
そして、判定が100にならないということは、確認する人が要る、ということです。

保留を人が見る。
統合の取り消しに備える。
おかしな結びつきを、あとから探す。
その作業は、件数に比例して増えます。

登録が増えるほど、保留も増えます。ツールを良くしているはずなのに、確認の仕事は、いっこうに減らない。そういう構図が、できかけていました。

賢くする方法なら、考えられます。

名前の比べ方を細かくする。
住所の重みを変える。
電話番号の扱いを見直す。

どれも、やる価値はあります。
けれど、判定を賢くしても、賢くしたぶんだけ、境目の件数が減るだけです。境目そのものを無くす方法は、点数の側からは出てきませんでした。

探す場所が、違っていました。

ユニークID(法人番号)の導入。マスターデータ化による「判定」から「確認」へのパラダイムシフト

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日本の法人には、番号が振られています。
会社を作ると、国から番号が渡されます。

13桁です。

この番号には、いくつか良い性質があります。
重複しません。同じ番号の会社は、日本に2つとありません。
変わりません。社名を変えても、移転しても、番号はそのままです。
そして、公開されています。誰でも、番号と、名前と、所在地を調べられます。

この3つが揃っている手がかりは、他にありません。
会社名は重なり、住所は変わり、電話番号は移ります。番号だけが、重ならず、変わらず、公開されている。
これほど条件の揃ったものが、すでに用意されていました。

この番号を、企業データに付けることにしました。
会社名と住所を手がかりに、公開されている一覧から探して、付ける。
付ける作業そのものは、これまでと同じ判定です。
似ているものを探して、確からしさを見る。
けれど、一度付いてしまえば、話が変わります。そして、この「一度」には価値があります。

判定は、毎回行うと、毎回間違える可能性があります。
確率の低い誤りでも、回数を重ねれば起こります。
番号を付けておくと、判定は1回で済みます。

1回だけ、丁寧に確かめる。そのあとは、確かめた結果を使い回す。
作業の総量は変わらないように見えて、間違いが入り込む機会は、大きく減ります。

付ける作業には、時間がかかりました。
数十万件を、順に照合していきます。一度に全部は処理できません。
けれど、これは一度きりの投資です。付け終わったあとは、新しく増えた会社に付けていくだけになります。

番号が付いた会社どうしは、比べる必要がありません。
番号が同じなら、同じ会社。
番号が違うなら、違う会社。
点数も、境目も、保留も要りません。
判定が、確認に変わります。

データエンリッチメントとシステム連携の基盤。共通IDがもたらす「正解の連鎖」

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この違いは、思っていたより大きいものでした。
まず、統合の事故が減ります。
似た名前の別会社を統合してしまう事故は、番号が付いている限り、起きません。

次に、情報を足せる範囲が広がります。
公開されているデータには、番号が付いています。こちらのデータにも番号が付いていれば、機械的に結びつけられます。

従業員数、設立年、受けている認定。そういった情報を、間違いなく正しい会社に足せます。

会社名で結びつけていたら、こうはいきません。
同じ名前の別会社に、他社の情報を足してしまう危険があります。

そして、外との連携にも効きます。
こちらのデータと、別の道具のデータを突き合わせるとき、番号が共通していれば、話が早い。会社名で照合すると、そこでまた表記ゆれの問題が始まります。

そして、この番号は、お客様の側でも使えます。自社で別のシステムを使っている場合でも、番号で突き合わせれば、話が早い。

こちらの独自の管理番号で管理していたら、外へ持ち出した瞬間に意味を失います。共通の番号を使うということは、自分たちのデータを、外の世界とつなげておくということでした。

番号の使い道は、判定だけではありません。
同じ番号を持つ公開データが、いくつもあります。

事業の内容。従業員の数。設立の年。受けている認定。表彰の履歴。これらは、それぞれ別の仕組みで公開されていますが、共通の番号で結びついています。

つまり、番号を1つ付けるだけで、その会社について書ける情報が、一気に増えます。1つの正解が、他の正解を連れてくる形になっていました。

こちらが集めて増やすのではありません。つながる先が、あらかじめ待っています。正解の側が、すでに網の目になっていました。

夜間バッチ処理とフェイルセーフの思想。不確実なアルゴリズムを排除し「たぶん」を断ち切る設計

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もちろん、全社に番号が付くわけではありません。

法人ではない事業者には、番号がありません。
個人でされている事業も、たくさんあります。
だから、番号での照合と、名前での照合の両方を持っています。

番号があれば、番号を優先する。無ければ、これまでどおり点数で判定する。番号は、全部を置き換える魔法ではありません。確実なところを、確実にするための道具です。

番号を付ける作業そのものは、夜のあいだに少しずつ進めています。
一度にすべてを処理しようとすると、第7話や第8話と同じことが起きます。
毎晩、決まった量だけ進める。新しく登録された会社にも、順に付いていく。

急がなくていい作業です。急がなくていい作業を、急がない形で作れたのは、それまでに何度か痛い目を見たからでした。

この機能を入れたあと、判定の見え方が変わりました。
以前は、判定の結果を見るとき、点数を見ていました。
いまは、まず番号があるかどうかを見ます。

番号があるものは、見なくていい。
番号がないものだけを、丁寧に見る。
確認すべき量が、大きく減りました。

減ったぶんは、そのまま、人が丁寧に見られる量に変わります。
全部を薄く見るのではなく、見るべきところだけを、濃く見る。

もうひとつ、番号を付ける作業そのものにも、気をつけたことがあります。
自信のないものには、付けません。
似た会社が複数見つかったとき、無理にどれかを選ぶことはしません。
付けないまま残せば、あとで人が確認できます。

間違った番号が付いていると、それ以降のすべての処理が、間違った会社を指します。確かなものを1つ、と言うときの「確か」は、付けない判断まで含めての話でした。曖昧なものをいくつ重ねても、どこかに「たぶん」が残ります。たぶん、が残っている限り、そこには人の確認が必要です。確かなものを1つ見つけるほうが、強い。

そして、その1つは、こちらが作ったものではありませんでした。
すでに世の中にあったものを、使っていなかっただけです。

探していたのは、賢い判定でした。見つかったのは、判定を減らす方法でした。

13桁。

たったそれだけの数字で、判定は、確認になりました。

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次回予告

第22話「郵便番号を直す」

住所はあるのに、郵便番号が空欄。
郵便番号はあるのに、住所が途中まで。

外を調べにいく前に、できることがありました。
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リストルは、今日もどこかを直しています。


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