💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

バニティメトリクス(虚栄の指標)の限界。送信件数に依存したアプローチの歪み

文面を送ったあと、こちらには何も分かりません。
読まれたのか。
開かれもしなかったのか。
興味を持たれたのか、迷惑に思われたのか。
返事が来れば分かります。
けれど、返事が来ることのほうが、ずっと少ない。
送った側から見えるのは、送った件数だけです。
100社に送った。それだけ。
その先で読まれたのか、捨てられたのか。件数の内訳は、どこにもありません。
数字はあるのに、意味が無い。そういう数字だけが、手元に残ります。
そして、送った件数は、成果ではありません。送った件数が増えても、会える会社が増えるとは限らない。けれど、他に見える数字がないので、つい、その数字を追いかけます。
営業の現場では、この状態で優先順位を決めています。
決め方は、たいてい、こうです。
規模の大きい会社から。
以前つながりのあった会社から。
気になった会社から。
どれも、間違いではありません。けれど、根拠は、こちら側の事情です。相手が、いまこちらに関心を持っているかどうかは、入っていません。
入れたくても、入れようがありません。
関心は、相手の中にあって、こちらの画面には映らないからです。
そして、この決め方には、副作用があります。
大きい会社ばかりに時間を使うことになる。
以前つながりのあった会社ばかりを回ることになる。
新しく増えた会社には、なかなか順番が来ません。
第2話で書いた、順番の来ない300社と、形としてはよく似ています。
あちらは仕組みの話で、こちらは人の判断の話ですが、結果は同じです。
呼ばれない列が、静かにできあがります。
インテントデータ(関心事)の捕捉。トラッキング機能が可視化するリードの熱量

映らないものは、仕方がない。
そこで、考えが止まっていました。
ひとつだけ、例外がありました。
文面には、リンクを入れることがあります。
詳しい資料の場所。
サービスの説明ページ。
問い合わせ先。
そのリンクを開いたかどうかは、こちらで分かります。
リンクを、いったんこちらの窓口を経由する形にしておき、そこを通った記録を残す。通ったら、その先へ案内します。相手には、ふつうにページが開いたようにしか見えません。
この仕組みには、注意点がいくつかあります。
まず、記録が残る窓口は、必ず動いていなければなりません。
そこが止まると、リンクそのものが開かなくなります。
先に案内して、あとから記録する形にしました。記録に失敗しても、ページは開きます。
次に、間に挟まることで、リンクが長く、読みにくくなります。
文面の中で不自然に見えないよう、できるだけ短い形にしました。
相手にとって、こちらの都合が見える作りにはしたくありませんでした。
この記録が入ってくると、画面の見え方が変わります。
昨日まで、全部が同じ顔をしていた一覧の中で、いくつかの会社にだけ、印が付きます。
その会社は、こちらの文面を開き、その中のリンクを押し、先のページを見に行った会社です。反応があった、という言い方をしています。
もちろん、これだけで商談になるわけではありません。
間違えて押したのかもしれない。別の目的で見ただけかもしれない。
それでも、何も分からなかった状態とは、まるで違います。
数としては、多くありません。
送った件数に対して、反応が出るのはごく一部です。
これは、この種の活動では普通のことです。
ただ、営業が1日に使える時間も、限られています。
限られた時間を、どこに置くか。
反応のあった数社に置くのか、一覧の上から順に置くのか。
同じ時間でも、置き方で結果が変わります。
自動化の境界線とセールスルーティング。システムは「気づき」までを担う

反応がある会社は、日によって違います。
朝に集中する日もあれば、夕方に固まる日もあります。
送った直後に開かれることもあれば、数日経ってから開かれることもあります。数日後に開いた会社のほうが、実は話が進むこともありました。
すぐ開くのは、たまたま画面を見ていたから。
数日後に開くのは、思い出して探したからです。
同じ「開いた」でも、意味が違う。そこまでは、機械には分かりません。
機械に分かるのは、開かれた、という事実までです。
その先の意味は、埋めずに渡します。
分からない部分を埋めて渡すと、印そのものの信用が下がっていくからです。
この情報は、いくつかの形で使えるようにしました。
ひとつは、一覧です。
反応のあった会社だけを集めた画面を作りました。
新しいものから順に並びます。朝、そこを見れば、昨日こちらに関心を示した会社が分かります。
この一覧は、朝に見る前提で作りました。一日の始めに、まずここを開く。
数社しか並んでいなくても、それでいい。
多くの情報を並べると、見る時間が要ります。
見る時間が要るものは、そのうち見なくなります。
数を絞ったのは、そのためです。毎朝ひらける形だけが、続きます。
もうひとつは、人物の記録です。
企業データには、会社だけでなく、その会社の担当者も記録できます。
反応があった担当者には、印が付きます。会社としてではなく、その人として見えます。
そしてもうひとつ、社内での共有です。
反応があったことは、担当者ひとりの情報にしません。
チームで見えるようにしました。
担当が休んでいる日に反応があっても、誰かが気づけます。
この機能を作りながら、気をつけたことがあります。
分かることの範囲を、広げすぎないことです。
こちらが見ているのは、「送った文面の中のリンクが、開かれたかどうか」だけです。
その方が他にどんなページを見ているのか、どこから来たのか、といったことは、追いません。
追う技術がないわけではありません。追わないことにしました。
こちらが知りたいのは、「いま、話をしてもよさそうか」の一点です。
それ以上は、営業に必要ありません。必要のない情報を持つと、第23話と同じ話になります。
もうひとつ、使い方の話です。
反応があった会社に、すぐ電話する。それが正解とは限りません。
押した直後に電話が来たら、見張られているように感じる方もいます。
だから、こちらでは「優先して対応する候補」として出しています。
何をするかは、人が決めます。
機械は、順番を並べ替えるところまで。
そこから先は、人の仕事です。
この線引きは、はっきり決めておく必要がありました。
反応があった会社に自動で連絡する、という作りもできます。
技術的には、難しくありません。
やりませんでした。
相手が一度こちらのページを見た、というだけの情報で、自動的に何かを送るのは、行き過ぎだと考えました。自動化していいのは、気づくところまでです。何をするかは、その会社との関係を知っている人が決めます。
データミニマイゼーションの実践。最小限のアクショナブルデータが変えた「朝の景色」

記録の残し方も、決めごとを置きました。
残すのは、いつ、どの会社の、どのリンクが開かれたか。
それだけです。
誰が押したのかまでは、特定しません。会社としての反応があった、という粒度で扱います。粒度を細かくすれば、できることは増えます。
増えますが、必要ではありませんでした。必要のない細かさは、持っているだけで、扱いを難しくします。
この機能を入れて、いちばん変わったのは、一日の始め方でした。
以前は、リストの上から順に連絡していました。
順番の根拠は、リストの並び順です。
いまは、反応のあった会社から見ます。
数は多くありません。日によっては、1社もない日もあります。
それでも、その1社は、昨日こちらに関心を向けてくれた1社です。
全員に同じだけ時間を使うのは、公平ではありません。
ただ、手がかりが無いだけです。
その手がかりは、相手のほうから、すでに出してくれていました。
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次回予告
第25話「メモを読むAI」
商談のメモを貼ると、
要点と、受注の確度と、失注しそうな理由が出ます。
いちばん難しかったのは、そこではありませんでした。
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リストルは、今日もどこかを直しています。
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