リストル:企業データベース開発日誌 第13話「英語のエラー画面」〜何が起きたか、なぜ起きたか、次に何をすべきか。ユーザーの離脱を防ぐエラー画面の鉄則〜

〜何が起きたか、なぜ起きたか、次に何をすべきか。ユーザーの離脱を防ぐエラー画面の鉄則〜 企業DB開発日誌

💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

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目次

  1. 開発環境では「一度も見たことがない」画面
  2. 開発者に便利な形が、ユーザーの時間を奪う
  3. 専門用語は意味を運ばず、不安だけを運ぶ
  4. いちばん大事で、いちばん忘れられる「3つ目」
  5. エラーは「直せる人」ではなく「困っている人」へ

開発環境では「一度も見たことがない」画面

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お客様が最初に見た画面を、作った私たちは、一度も見たことがありませんでした。

今回は、その話です。

手元で動くツールには、前提があります。
そのツールだけでは動かない部品が、いくつかあります。
パソコンの側に、あらかじめ入っていてほしいもの。こちらで一緒に配れるものもあれば、仕組み上、そうできないものもあります。

入っていない環境で起動すると、どうなるか。
私たちは、それを長いあいだ考えていませんでした。
入っている前提で作っていたからです。

こちらの手元には、必要なものが入っています。
開発をしている環境なので、当然です。
だから、その画面を、私たちは一度も見たことがありませんでした。
見たことのない画面のことは、考えようがありません。

ある日、起動できないという連絡がありました。
画面に何が出ているのかを、教えていただきました。

英語でした。

技術的な用語が並び、どこで止まったのかを示す行が、いくつも続いている。
書いた側から見れば、これほど親切なものはありません。
どの部品が足りないのかが、はっきり書いてあります。
原因の特定に、1分もかかりませんでした。

開発者に便利な形が、ユーザーの時間を奪う

問題は、その1分の前にあった時間です。
その画面を見た人は、何ができるでしょうか。

閉じる。
もう一度起動する。
また同じ画面が出る。
三度目を試す前に、手が止まります。

ツールが悪いのか、パソコンが悪いのか、自分の操作が悪いのか。
決め手のないまま、仕事の前の時間だけが減っていきます。

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英語を読む人でも、書かれている用語は日常のものではありません。
検索しようにも、どこを検索すればいいのか分からない。
そして何より、この画面には、次にすべきことが、1つも書かれていません。
書いてあるのは、「何が起きたか」だけです。

こちらが用意していたのは、問題を直せる人に向けた説明でした。
実際にその画面の前に座っていたのは、問題を直したいのではなく、仕事を始めたいだけの人です。
その2つは、まったく別の相手です。

この違いは、作る側からは見えにくいものです。
開発中、その画面をいちばん多く見るのは、私たちです。
何度も出します。出るたびに読みます。
読めば原因が分かるので、便利だと感じます。
便利だと感じたものは、そのまま残ります。

つまり、この画面は、「自分たちにとって便利な形」のまま出荷されていました。
出荷したあと、その画面を見る人は、もう私たちではありません。
作っているあいだの読者と、使われているあいだの読者が、入れ替わる。
入れ替わることを、私たちは想定していませんでした。

開発中に、いちばん読みやすかった画面が、出荷した先では、いちばん読めない画面になっていました。
しかも、その画面は起動の瞬間に出ます。
まだ何もしていない段階です。
自分の操作が原因ではない、とも判断できません。

「自分が何か壊したのかもしれない」
そう思わせてしまう画面を、こちらが配っていたことになります。

専門用語は意味を運ばず、不安だけを運ぶ

私たちは、この画面を「エラー表示」と呼んでいました。

正確には、エラー表示ではありません。
作業の中断です。

その人の1日から、時間が抜け落ちます。
何が悪いのかも分からないまま、ツールのせいなのか、自分のせいなのかも分からないまま。

いちばん申し訳なかったのは、そこでした。
連絡をくださった方には、その場で対応の手順をお伝えしました。

10分ほどで、動くようになっています。
10分で解決することのために、その方は、こちらに連絡する手間をかけています。連絡するかどうかを迷った時間も、おそらく、その前にありました。

ツールの不便は、使う時間だけでなく、その周りの時間も奪います。

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直したことは、こうです。

起動する前に、必要な部品が揃っているかを確認するようにしました。
揃っていなければ、その時点で止めます。
そして、日本語で伝えます。

何が足りないのか。
それを用意するには、どこで、何をすればいいのか。
どれくらい時間がかかるのか。
分からなければ、どこに連絡すればいいのか。

技術的な内容は、いっさい書きません。
書いても、読む人の役に立たないからです。

もとの英語の記録は、消していません。別の場所に残しています。
こちらが調べるときには、あれがいちばん役に立ちます。
読む相手によって、置く場所を分けた。それだけの話です。

もうひとつ、案内の書き方も決めました。

こちらの言葉を使わない。

「必要な構成部品が不足しています」ではなく、
「起動に必要なものが入っていません」と書く。

専門の言葉は、正確です。
正確ですが、それを知っている人にしか正確ではありません。
知らない人にとっては、正確でも不正確でもなく、ただの文字です。

意味不明な文字は、意味を運びません。
不安だけを運びます。

いちばん大事で、いちばん忘れられる「3つ目」

そして、案内には必ず終わりを付けました。

「うまくいかない場合は、こちらへご連絡ください。」

この1行があるかどうかで、画面の前の空気が変わります。
行き止まりではない、と分かるからです。

この考え方を、他の画面にも広げました。

保存できませんでした。
取り込めませんでした。
送信できませんでした。

どれも、それだけでは何の情報でもありません。

いま書いているのは、こういう形です。

何が起きたか。
なぜ起きたか。
次に何をすればいいか。

3つ目がいちばん大事で、そして、いちばん忘れられます。
忘れられる理由も、はっきりしています。

1つ目と2つ目は、作っている側がすでに知っていることです。
書くのに、調べる必要がありません。
3つ目は、その人が次に何をすべきかを考えないと書けません。
つまり、いったん相手の側に立たないと、書けない。

その一手間が省かれると、画面には、原因だけが並びます。

この件は、数字の出てこない話です。
何社が困ったのかは、正確には分かりません。
連絡をくださった方が何人かいた、というだけです。

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エラーは「直せる人」ではなく「困っている人」へ

連絡をくださらなかった方のほうが、おそらく多いのだと思います。
黙って閉じて、その日は別のことをした。
その静かな損失は、こちらの記録には残りません。

起動できなかった、という事実も、どこにも残りません。
残らないものは、数えられません。
数えられないものは、直す理由になりにくいものでした。

だから、いまは、こういう記録を残すようにしました。

起動できずに終わった回数。
その理由。

数だけでも分かれば、連絡が来なくても、状況が見えます。
そして、その数が増えたときに気づけます。

お客様が困っていることを、お客様の連絡だけに頼って知るのは、仕組みとして弱すぎました。
連絡をくださる方は、たいてい、いちばん親切な方です。
その方のおかげで気づける、という状態は、運が良かっただけです。

この考え方を持ってから、画面の文章を書く時間が、少し増えました。
機能を作る時間より、その機能が失敗したときの文章を考える時間のほうが、長くなることもあります。

うまくいっているときの画面は、そう難しくありません。
やりたいことが、そのままできるからです。
難しいのは、できなかったときです。
そして、ツールの評価は、たいてい、できなかったときの態度で決まります。

うまく動いているあいだは、ツールのことは、意識されません。
意識されるのは、止まったときだけです。
そのときに何が書いてあるかで、そのツールの印象が決まってしまいます。

エラーは、直せる人ではなく、困っている人に向けて書くものです。
画面の前に座っているのは、たいてい、直せない人のほうです。

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次回予告

第14話「618社」

「認証があるので送れません」

そう判定して、除外していました。
その会社を、実際に開いてみました。
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リストルは、今日もどこかを直しています。


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