
はじめに
「この会社には、どの機能を見せればよさそうですか?」
営業リストを渡された担当者から、そんな質問を受けたことはありませんか。
対象業界の会社名、住所、電話番号はそろっている。でも、自社サービスとどんな接点があるのかは書かれていない。担当者は企業サイトを開き直し、事業内容を調べ、初回連絡の話題から考えることになります。

一方、リストを作った側も「同じ業界だから」という理由以上には説明できない。件数は増えたのに、営業の準備がもう一周始まってしまいます。
SaaS営業では、業種や規模に加えて、自社サービスが支援する業務との接点を残すと、リストを使いやすくできます。
この記事では、架空の企業比較を使いながら、対象条件の決め方、企業の探し方、営業結果からの見直しまでを解説します。
同じ業界の2社でも、最初に聞くことは違う
ここでは説明用に、架空の候補を比べてみましょう。
販売拠点の報告を集め、本部で確認する業務を支援するSaaSを想定します。
候補A:新しい店舗の開設を発表した企業
公開情報では、複数店舗を運営し、さらに出店することが確認できたとします。
この企業には、次の質問を準備できます。
新店舗が増える際、各店舗から本部への報告方法はどのようにそろえていますか。
ただし、すでに適した仕組みで運用している可能性もあります。出店の発表だけで、管理に困っているとは判断しません。
候補B:同じ業界だが、運営形態がまだ分からない企業
業種は一致していても、拠点構成や本部の役割が確認できていない企業です。
まず聞くのは、導入の話ではなく、どのような業務があるかです。
拠点の情報は、本部でまとめて確認する運用でしょうか。
Aは具体的な変化を入口にでき、Bは業務の有無から確認する必要があります。
どちらも候補にはできますが、準備する質問は違います。リストには、この違いが分かる情報を残しましょう。

ターゲット条件は「支援する作業」から決める
企業を探す前に、自社サービスが支援する作業を一文で書いてみてください。
「業務を効率化する」では広すぎます。例えば、次のように具体化します。
- 各店舗から届く報告を、本部で確認する
- 経費の申請内容を確認し、承認へ回す
- 請求に必要な情報を集め、発行状況を管理する
- 営業担当者の接触履歴を、チームで共有する
その作業がどのような企業にあるかを考え、対象条件を決めます。
さらに、営業だけで判断せず、導入支援の担当者とも確認しましょう。
- 自社サービスで対応できる運用か
- 必要な機能を提供できるか
- 導入後の支援体制が合うか
- 個別対応が必要な場合、どこまで対応するか
営業先として魅力があっても、提供できる範囲と合わなければ、提案を進める前に確認が必要です。
企業情報は、どこまで調べてからリストへ入れる?
最初から全企業を詳しく調べると、候補がなかなか増えません。反対に、会社名だけでは担当者の調べ直しが増えます。
そこで、候補を次のように分けて管理します📋
- 接点を確認できた企業: 対象業務に関係する事実があり、質問を用意できる
- 追加確認が必要な企業: 業種は合うが、業務や拠点構成が不明
- 今回は対象外の企業: 自社の対応条件と合わない
不明な企業を、すぐ対象外にする必要はありません。何が分かれば判断できるかを書いておけば、次の確認につながります。
企業情報が複数サイトに分かれている場合も、すべてを一度に調べ切るより、選定に必要な項目から確認しましょう。
検索や転記を繰り返す時間が減れば、初回ヒアリング、業務に合わせたデモ準備、商談後のフォローへ時間を回せます。
ターゲット企業を見つける5つの入口

必要な条件が決まったら、その条件を確認できる情報源を選びます。
1.業界団体の会員名簿
業種特化SaaSの候補探しに使えます。
会員企業の事業内容を確認し、自社が支援する業務との接点を探します。団体への所属だけで、同じ運用をしているとは考えないようにしましょう。
2.業種別サイトの掲載企業
工場、店舗など、事業の特徴から探す入口です。
法人名と掲載施設の関係を確認し、現場向けの提案なのか、本部向けの提案なのかを整理します。
3.地域別の法人情報
対応地域や担当エリアで候補を探す方法です。
別の地域へ広げる際は、自社の導入支援体制も確認してください。所在地だけで、実際の事業範囲を判断しないこともポイントです。
4.対象業務に関わる求人
経理、人事、営業事務など、支援する業務に関わる募集を確認します。
仕事内容の記載を、業務の進め方を聞く入口にできます。ただし、求人があるだけで、業務量の増加やツール不足は判断できません。
5.拠点拡大・新事業の発表
企業の変化から候補を探す方法です。
発表日と現在の状況を確認し、変化と対象業務がどう関係するかを考えましょう。新事業を始めたからといって、必ず導入予算があるとは限りません。
条件が決まったら、候補収集を仕組み化する
手作業で集める方法もあります。ただ、同じ業界の候補を継続して追加するなら、収集作業を効率化する選択肢があります。
その一つが、リストルです。

SaaS向けLPでは、gBizINFO、マイナビ転職、PR TIMES、業界団体・会員名簿サイトなどが紹介されています。
公開情報を収集し、CSVで出力できます。取得項目や指定条件は、サイトによって異なります。
例えば、次のように使えます。
- 業種特化SaaS: 対応する会員名簿から企業を集め、対象事業を公式サイトで確認する
- 経理業務向けSaaS: マイナビ転職の募集企業を集め、掲載された業務内容から質問を作る
- 拠点管理向けSaaS: PR TIMESの発表企業を集め、拠点構成や本部の役割を確認する
収集・転記を効率化した分、企業の業務を理解し、提案を組み立てる工程に時間を使う方法です。
リストには「事実・仮説・質問」をセットで残す
企業名や連絡先に加えて、担当者が使いやすい短いメモを残しましょう。
先ほどの拠点管理SaaSなら、次の形です。
・確認した事実
新店舗の開設を発表している。出典と確認日も記録する。
・営業の仮説
拠点が増える際に、報告方法をそろえる機会があるかもしれない。
・初回の質問
新店舗から本部への報告は、どのような方法で管理しているか。
この形なら、仮説を事実のように伝えることを避けられます。
「拠点が増えて大変ですよね」と話す前に、今の方法を聞く。営業資料の出番は、その後でも遅くありません。

連絡前に、既存データと照合する
収集結果は、既存顧客、商談中の企業、接触履歴と照合します。
複数拠点を持つ企業は、法人と拠点の関係を残してください。同じ窓口へ別担当者が連絡しないよう、担当と対応状況も共有します。
CSVインポートに対応したCRM・SFAへ取り込む場合は、項目と形式を確認し、重複を整理してから進めましょう。
デモを作り込む前に、確かめたいこと
公開情報で接点が見えても、導入の必要性はまだ分かりません。
初回の会話では、次の点を確認します。
- 対象業務を誰が担当しているか
- 現在、どのような方法やツールを使っているか
- 今の方法で続けたい点は何か
- 変更したい点があるか
- 導入を検討する場合、誰が関わるか
その結果、自社サービスと合うなら、確認できた業務に合わせてデモを準備します。
機能をすべて見せるより、相手が話した作業をどう進められるか説明する方が、検討する内容をそろえやすくなります。
リストルは、導入済みツール、予算、困り事、購入意向を判定しません。候補収集と、このヒアリングは別の工程です。

営業結果は、次の企業選びへ戻す
リストを渡して終わりにせず、対象条件を見直す材料を残しましょう。
例えば、接触結果は次のように区別します。
- 連絡がつかなかった
- 対象業務がなかった
- 業務はあるが、現在の方法で足りていた
- 機能や運用が合わなかった
- 今後の検討時期を確認できた
「連絡がつかなかった」と「サービスが合わなかった」は、違う結果です。
対象業務がない企業が続くなら、収集条件を見直す。機能の不一致が続くなら、対象条件を導入支援側と確認する。こうして、企業選びの基準を更新します。
リストの行数だけを見るより、「なぜ候補にしたか」と「何が分かったか」を残すと、次の判断に使えます。
よくある質問

Q1.競合SaaSを使っていない企業だけを集められますか?
リストルでは導入済みツールを判定できません。
公開情報に記載がある場合も、現在の利用状況は確認が必要です。企業名を集めた後、対象業務の管理方法とあわせて聞きましょう。
Q2.対象企業の規模が分からない場合は、候補から外しますか?
規模が自社サービスの対応に欠かせない条件なら、確認が必要です。
不明な段階では追加確認の候補に分け、推測した人数や売上を入力しないようにしましょう。
Q3.求人情報から導入意向は分かりますか?
求人は、対象業務の存在を調べる入口です。導入意向の証拠ではありません。
掲載された仕事内容から質問を作り、現在の方法や改善したい点を聞いてください。
Q4.無料お試しでは、どこまで使えますか?
LPでは、約40サイト・最大3,000件・CSV出力、クレジットカード不要、自動課金なしと案内されています。

有料版は300以上の収集サイトに対応します。希望する情報源が無料お試しの対象かは、事前に確認しましょう。企業データベースは本体とは別料金の有料オプションです。
次に作るリストには、質問を一つ添えてみる

まずは、一つの対象業界で候補を選び、次の一文を書いてみてください。
「この企業には、何を確かめたいのか」
答えが書けなければ、対象条件や必要な情報を見直す余地があります。書けるなら、その質問を担当者へ渡しましょう。
SaaS営業リストは、企業探しと業務理解をつなぐ資料です。収集する情報と、会話で確認する内容を分けると、チームで使いやすくなります。
まずは、自社の対象企業を探せるか、必要な情報を取得できるかを確認してみてください。
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