リストル:企業データベース開発日誌 第12話「更新できないツール」〜お客様に届かない修正。手元で動くツールの「自動更新」が機能しなくなった日〜

リストル:企業データベース開発日誌 第12話「更新できないツール」 企業DB開発日誌

💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

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目次

  1. 「前提」が壊れた日に初めて気づく自動更新の仕組み
  2. エラーを出さずに静かに終わる「見えない故障」
  3. 足りているかは確認しても「多すぎないか」は見ていない
  4. 直したのではなく、届いた。「届ける道」こそが土台である

「前提」が壊れた日に初めて気づく自動更新の仕組み

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お客様の手元で動くツールがあります。

ホームページのフォームへ文面を届けるためのものです。
サーバーの上ではなく、それぞれのパソコンの中で動きます。

手元で動くものには、利点があります。
速い。落ちにくい。回線の事情に左右されにくい。

そして、決定的な弱点があります。
配ったあと、こちらから触れません。

だから、自動更新の仕組みを付けています。

新しい版を用意したら、「いま最新はこれです」という案内を1か所に置く。
ツールは起動のたびにそこを見にいき、自分より新しい版があれば、取ってきて入れ替える。

お客様は何もしなくていい。
気づいたら新しくなっている。

そういう作りです。

うまく動いているあいだ、この仕組みは誰の目にも入りません。
目に入らないことが、うまく動いている証拠でもあります。

この仕組みがあるので、私たちは安心して直せます。
不具合が見つかっても、直して、置けばいい。
数日のうちに、全員の手元が新しくなります。

その安心が、前提になっていました。
前提は、壊れたときに初めて、前提だったと分かります。

エラーを出さずに静かに終わる「見えない故障」

ある日、その仕組みが動かなくなりました。
新しい版を用意して、案内を書き換えて、置きました。

手元の道具を起動します。
何も起きません。

もう一度起動します。
何も起きません。

エラーも出ません。
「更新があります」とも言いません。
ただ、いつもどおり起動して、古い版のまま動きます。

こういうときは、何も起きないほうが、原因を探しにくいものです。
エラーが出れば、その文言から調べられます。
何も起きなければ、どこまで進んだのかも分かりません。

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止まってくれる故障は、止まった場所から調べられます。
黙って通り過ぎる故障は、どこを通ったのかを探すところから始まります。

最初に疑ったのは、置き場所でした。
案内の置き場所が変わっていないか。
道具が見にいく先と、こちらが置いた先が、食い違っていないか。

確認しました。合っています。
手元から案内を読みにいくと、ちゃんと返ってきます。
中身も、新しい版のことが書いてあります。
読める。中身も正しい。それなのに、更新が始まらない。

次に、道具の側の記録を見ました。
起動したとき、案内を見に行ったかどうか。
見に行った結果、どう判断したのか。

記録には、見に行ったことまでは残っていました。
そのあと、何も書かれていません。
失敗した、とも書いていない。
更新の必要なし、とも書いていない。

途中で、静かに終わっている。
この「何も書かれていない」が、手がかりでした。

足りているかは確認しても「多すぎないか」は見ていない

処理は、案内を読み込む段階で終わっています。
つまり、読み込みの結果を、ツールが受け入れなかったということです。

次に見たのは、案内そのものの形でした。
この案内は、決まった形式で書かれた短いファイルです。

新しい版の番号。
取ってくる場所。
中身が壊れていないかを確かめるための照合値。

必要なことだけが並んでいます。

目で見るだけでは、正しそうに見えます。
正しそう、を確かめる方法は、1つでした。
正しく動いていたころのものと、並べることです。

並べて、前の版の案内と見比べました。
項目が、1つ多い。

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前の版には無かった項目が、1つ増えていました。
1項目の違いに気づくまでに、少し時間がかかりました。
案内ファイルは、目で見て確認していました。
必要な項目が、正しく入っているかどうか。

必要なものが揃っているかは、見ています。
余計なものが入っていないかは、見ていませんでした。

確認は、たいてい「足りているか」を見ます。
「多すぎないか」を見る習慣は、ありませんでした。

その1項目を書き加えたのは、こちらです。
案内ファイルを組み立てる作業を、用意されたツールにまかせていました。

そのツールは、こちらの想定より少しだけ親切で、必要のない項目を1つ、足してくれていました。
足された項目そのものに、害はありません。
中身も、間違ってはいません。

ただ、受け取る側が、それを知りませんでした。
ツールは、案内を読み込むときに、「知らない項目が入っている」と判断しました。
判断したうえで、こう考えます。

この案内は、自分の理解できる形ではない。
無理に読み進めるのは危ない。
今回は、何もしないでおこう。

つまり、安全側に倒れたのです。

その判断は、正しい。
壊れた案内を信じて、変なものを取ってくるより、何もしないほうがずっとましです。

結果として、何も起きませんでした。
そして、いつもいうように、何も起きないことは、外からいちばん見えにくい状態でした。

直したのではなく、届いた。「届ける道」こそが土台である

直したことは、3つあります。

① 案内ファイルの中身を、正しい形に戻しました。

② 案内を組み立てる手順を、自前のものに切り替えました。
親切に何かを足してくれるツールは、この用途には向きません。

そして、いちばん困ったのは、この時点でした。
更新できないツールは、お客様の手元にあります。
こちらから直せるのは、案内のほうだけです。
ツールそのものは、触れません。

幸い、今回は案内の側の問題だったので、案内を直したら、次の起動から更新が始まりました。
もしツールの側に問題があったら、更新の道が使えない状態で、更新が必要なツールを直すことになります。

配り直すしかありません。
お客様に、手作業をお願いすることになります。
その一歩手前でした。

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③ 配る前の確認手順に、1項目を加えました。

新しい版を置いたら、実際に古い版を起動して、更新が始まるところまで見る。
案内が読めることの確認では足りません。
更新が終わって、版の番号が変わるところまでを見ます。

この件のあと、言い方を1つ変えました。
「直しました」ではなく、「直したものが、届きました」と言うようにしました。

サーバーの上で動くものは、直せば、その瞬間から新しくなります。
そこには距離がありません。
手元で動くものは違います。直したものは、こちらの手元にあるだけです。

お客様のパソコンで動いているのは、まだ古い版です。
その距離を埋めるのが、更新の道です。
だから、更新の仕組みは、ツールのいち機能ではありません。
そのツールを、これから直し続けられるかどうかを決める、土台のほうです。

土台が壊れているときは、新しい機能を作っている場合ではありません。
いまは、更新の仕組みに関わる部分を変えるときだけ、確認の手順を倍にしています。
他の機能なら、不具合が出ても直せます。
ここだけは、壊れると、直す手段そのものが無くなります。

ツールそのものは、いくら磨いても構いません。
けれど、届ける道が壊れていたら、磨いた成果は、こちらの机の上にあり続けます。
そして、その状態は、こちらからは見えません。

こちらの手元では、新しい版が動いています。不具合も直っています。
お客様の手元では、古い版が動いています。不具合も、そのままです。
同じツールの話をしているつもりで、違うものの話をしていることになります。

この件のあと、配る作業の記録を残すようにしました。
いつ、どの版を、どこに置いたか。
そのとき、案内をどう書き換えたか。
更新が実際に始まったことを、どう確認したか。

配る作業は、月に何度もあるわけではありません。
だから、手順を覚えていられません。
覚えていられない作業ほど、書いておく価値がありました。

配ってしまったものは、直しても、届きません。
届ける道が壊れていたら。

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次回予告

第13話「英語のエラー画面」

起動した瞬間、見慣れない英語の文字列が並びました。

お客様には、できることが何もありません。
その画面を、私たちは一度も見たことがありませんでした。
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リストルは、今日もどこかを直しています。


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