リストル:企業データベース開発日誌 第10話「届かない結果」〜「送信した」は「届いた」ではない。システム間の連携で結果が0件になった理由〜

リストル:企業データベース開発日誌 第10話「届かない結果」 企業DB開発日誌

💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

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目次

  1. 「輪」を閉じるための結果が、一度も返っていなかった
  2. 「送信した」=「届いた」と誤読していた記録の罠
  3. 正常な記録が「攻撃」と誤認される見えない門番
  4. 異常にいち早く気づく「数を合わせる」強力な仕組み
  5. 作る順番が「見つかりにくさ」の順番になる

「輪」を閉じるための結果が、一度も返っていなかった

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リストルには、輪になっている仕組みがあります。

🔂企業データから、送る相手を選ぶ。
🔂フォームへ文面を届ける。
🔂その結果を、企業データへ返す。
🔂返ってきた結果をもとに、次に送る相手を選ぶ。

輪になっている、というのが大事なところです。

一方通行なら、送りっぱなしで終わります。
送った数だけが増えていく。

輪になっていれば、送った結果が次に効きます。

回すほど、無駄が減る。
回すほど、当たる確率が上がる。

そういう作りにしたつもりでした。

輪の最後の1本。
「結果を返す」という部分が、動いていませんでした。

ある日壊れた、のではありません。
本番の道では、最初から一度も、通っていませんでした。

試験のときには、動いていました。

こちらの手元から、こちらの受け口へ。
その経路では、何も止まりません。

試験は、いちばん見通しのいい道で行われます。
障害物のない、まっすぐな道。
通れることを確かめたのは、その道だけでした。

本番の経路は、通り道が違います。

試験で通ったから大丈夫、とは言えなかった。
そのことに、あとで気づきました。

気づいたのは、本番の運用が始まったあとでした。

1,155社分の送信が終わっています。
送信そのものは動いています。結果も、手元には残っています。

企業データ側を見ました。

返ってきた結果は――

0件。

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「送信した」=「届いた」と誤読していた記録の罠

最初にしたのは、数字を疑うことでした。
見る画面を変え、条件を変えて、数え直します。
どこから数えても、0のままでした。

1件も返っていない、というのが、かえって手がかりでした。
半分が返って、半分が返らないなら、中身の問題です。
1件も返らないなら、通り道の問題です。

送る側を確認しました。
結果を作り、送信し、その記録も残っています。
送った、という事実は、はっきりしています。

受け取る側を確認しました。
受け取る窓口は、待っています。
テスト用のデータを手元から送ると、ちゃんと受け取ります。

送る側は送っている。
受け取る側は待っている。
そして、何も届いていない。

どちらかが嘘をついているのなら、話は早い。
送った記録が間違っているか、
届いているのに気づいていないか。

このときは、まだ、そのどちらかだと考えていました。
あいだ、という場所を、疑っていませんでした。

ここで、送る側の記録をもう一度見ました。
「送信した」とは書いてあります。
では、送ったあとに何が返ってきたのか。
その部分は、記録していませんでした。

送信の成否を、こちらは「送る処理が最後まで走ったかどうか」で判断していました。
相手が受け取ったかどうかは、見ていません。
つまり、送る側の記録は、「送ろうとした」という意味しかなかったのです。

「送信した」という言葉を、私たちは「届いた」と読んでいました。
書いた覚えのない意味まで、読み取っていたことになります。

正常な記録が「攻撃」と誤認される見えない門番

第15話でも、これと似た話が出てきます。
やったことと、届いたことは、別の記録です。

ここで、前の話が頭をよぎりました。
見えない門番です。

送っている結果の中身を、あらためて見ました。
そこには、フォームに入力した内容の記録が含まれていました。
どの欄に、どんな値を入れたのか。
その欄が、どういう種類の欄だったのか。

入力欄の種類を書き表すために、山括弧を使った短い表記を使っていました。
人が読むには分かりやすい書き方です。
門番から見ると、それはホームページに悪意のある部品を差し込む攻撃の形に、よく似ていました。

正常な結果が、攻撃と誤って判断されていました。

こちらに悪意はありません。
門番にも、落ち度はありません。
形が似ていた、というだけです。

そして門番は、止めたことをこちらに教えてくれません。
送った側の記録には「送信した」と残ります。
受け取る側の記録には、何も残りません。
そのあいだで消えているので、どちらの記録を見ても、原因にたどりつけない。

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異常にいち早く気づく「数を合わせる」強力な仕組み

この記録を送っていたのには、理由があります。
送信がうまくいかなかったとき、どの欄で止まったのかが分かると、原因を直せます。

入力欄の種類が想定と違ったのか。
必須の欄を埋めていなかったのか。

改善のために、必要な情報でした。
必要だから送っていたものが、
必要だから止められていた。
止まっていることに気づけなければ、改善の材料も、永久に届きません。

直し方は、第9話と同じ考え方でした。
結果を送るときに、中身をまるごと符号に置き換える。
受け取った側で、元に戻す。
門番の目には、無害な文字列の並びとして映ります。

あわせて、輪が閉じているかどうかを、自分たちで確認できるようにしました。
送った件数と、受け取った件数を、両側で数える。
数が合わなければ、その時点で分かります。
数を合わせる仕組みは、地味ですが強力でした。

原因が分からなくても、異常だけは分かります。
原因を突き止めるのは、あとでいい。
まず、おかしいことに気づけるかどうかです。
結果が返らなかったあいだ、こちらは「順調に動いている」と思っていました。

今回いちばん怖かったのは、0件という状態が、しばらく誰にも見えていなかったことです。
数を数える仕組みは、そのあと他の連携にも入れました。

作るのに、半日もかかりません。
半日で作れるものを、それまで、どこにも入れていませんでした。

輪が閉じていないシステムは、片肺で動きます。
送ることはできます。
数を増やすこともできます。
けれど、結果が返らないので、賢くはなりません。

同じ会社に、また送ってしまう。
反応があった会社に、気づけない。
届かなかった会社を、次も候補に入れてしまう。
前に進んでいるように見えて、同じところを回っているだけになります。

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作る順番が「見つかりにくさ」の順番になる

1,155社分の結果は、次の送信のための材料でした。
材料が届かないまま、選ぶ作業だけが続いていました。

この件のあと、確認の順番を変えました。
新しい連携を作ったときは、まず「往復」を1件だけ通してみる。

送れることを確認して満足しない。
返ってきたことまでを、目で見る。
片道は、たいてい成功します。
落ちるのは、いつも帰り道です。

理由は、作る順番にあります。
連携を作るとき、まず送る側から書きます。
送れることを確認して、次に受け取る側を書きます。
最後に、結果を返す部分を書きます。

いちばん最後に書かれた部分が、いちばん試される回数が少ない。
そして、いちばん最後の部分は、動かなくても、目に見える不具合になりません。
送信は動いている。数字も増えている。
返ってきていないことだけが、静かに欠けている。

作る順番が、そのまま、不具合の見つかりにくさの順番になっていました。
この輪は、いまも1日に何度か回っています。
送る。届く。結果が返る。次の相手が決まる。
回っていることを、毎日確認しています。

確認しているのは、件数が合っているかどうかだけです。
中身は見ていません。
中身を見ようとすると、量が多すぎて続きません。
続かない確認は、無いのと同じです。

数を数えるだけなら、機械にできます。
毎日、黙って数えて、合わないときだけ知らせる。
いちばん単純な確認が、いちばん長く続きました。

正しく作った両側が、あいだで止まることがあります。

送った側の画面には、送信済みと出ています。
受け取る側の画面には、まだ何も届いていません。

どちらも、嘘はついていませんでした。
嘘をつく余地さえ、ありませんでした。

それぞれが、自分の見えている範囲を、正確に記録していただけです。
見えていない範囲があることを、どちらも書けなかった。それだけです。

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次回予告

第11話「反映されないCSS」

見た目の修正をアップしても、画面が変わりません。

ブラウザのせいだと思っていました。
何か月も。
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リストルは、今日もどこかを直しています。


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