これは、一つの営業支援ツールが少しずつ賢くなっていく、いまも続いている記録です。
派手な話は、ほとんど出てきません。
天才も、閃きも、一夜にして世界が変わる瞬間もありません。
あるのは、うまくいかなかった一件を実際に開いて、「なぜだろう」と眺めるところから始まる、ずいぶん地味な時間の積み重ねだけです。
書いていて少し気恥ずかしいのは、出てくる間違いの多くが、笑ってしまうほど単純なことです。
けれど、その単純な間違いを一つずつ拾っていくうちに、成績は「200社に2社」から「5社に1社」まで動きました。
改良の回数は、300を超えています。
『リストル:フォームリーチツール改善奮闘記』によろしければ、お付き合いください😊

目次
- 成功数を増やす改修のリアル。正直なエラー報告から生まれるシステム改善
- ■ 新しい600社を迎え入れる準備と、結果を開く朝の緊張
- ■ 開けた先にあった「もう1枚の扉」
- ■ 人間が無意識に待つ「送信後のひと呼吸」を機械は待てない
- ■ 見立ては正しくても、最後まで通すには「もうひと手間」が要る
成功数を増やす改修のリアル。正直なエラー報告から生まれるシステム改善
見立てが正しいかどうかを、確かめる日が来ました。
手元には、2つの新しいものがありました。
1つは、600社分の扉です。
これまで門前で引き返していたページを、普通のフォームとして扱えるようになりました。
もう1つは、待ち方です。
時間が来たら切るのをやめ、進んでいるかぎりは待つようにしました。
どちらも、机の上では正しく見えました。
机の上で正しく見えるものが、そのまま外で通用するとはかぎらないことは、これまでで十分に学んでいます。

■ 新しい600社を迎え入れる準備と、結果を開く朝の緊張
準備には、3日かかりました。
新しい扉を扱えるようにした分、これまで通っていたページで変なことが起きないかを、1つずつ確かめておく必要がありました。
直したところより、直していないところのほうが心配になる。
このあたりの感覚は、回を重ねるうちに身につきました。
前の晩に、もう1度だけ、新しい扉のページを10社ほど手で開いて確かめました。
どれも、ふつうに送れました。
手で送れるものが、機械で送れるとはかぎりません。
それも、これまでに学んでいます。
それでも、手で送れないものは、機械でも送れません。
確かめておいて、損はありませんでした。
ふたたび、10台のパソコンを並べました。
夜のうちに動かして、朝に結果を開く。
この数か月で、何度も繰り返してきた段取りです。
ただ、この晩は少しだけ落ち着きませんでした。
前の回で「増えるはずです」と現場に伝えてしまっています。
増えなかった場合の報告のしかたを、寝る前に、少しだけ考えました。
■ 開けた先にあった「もう1枚の扉」
朝、記録を開きました。
まず、止まっている台がないことを確かめます。ゼロでした。
次に、こなした数を見ます。前より増えていました。
そして、届いた数を見ました。
届く数は、増えていました。
まず、そのことは書いておきます。
門前で引き返していた分が、ちゃんと数に入ってきました。
見立ては、間違っていませんでした。
ただし、思っていたほどではありませんでした。
600社分の扉を開けたのに、最後まで通り抜けられたのは、そのうちの一部でした。
残りは、扉の内側で止まっていました。
開けた先に、もう1枚あったのです。

こうなると、やることは決まっています。
届かなかったものを、1社ずつ開く。
30社ほど開きました。
どれも同じ顔をしていました。
埋まっている。押している。何も起きていない。
同じ形の失敗が並んでいるときは、たいてい原因も1つです。前の回で覚えたことでした。
開いてみると、フォームはちゃんと表示されていました。
欄も、正しく埋まっていました。
名前も、ふりがなも、用件も、きれいに入っています。
自分で書いたのと、見分けがつきません。
ここまでは、完璧でした。
送信ボタンを押したあとの記録が、こうなっていました。
「押しました。何も起きませんでした」
自分で同じページを開いて、同じように埋めて、同じボタンを押してみました。
ひと呼吸置いて、完了の画面が出ました。
■ 人間が無意識に待つ「送信後のひと呼吸」を機械は待てない
ひと呼吸。
1秒か、2秒か、そのくらいです。
人間なら、気にもとめない間です。
押して、画面が切り替わるのを待つ。
誰でも、無意識にやっています。
念のため、他の会社でも同じことをしました。
やはり、押してすぐには何も起きません。
少し置いてから、画面が変わります。
あっ、と思いました。
新しい世代の仕組みは、送信のその瞬間に、裏側で短い確認をしています。
訪問者には何も求めませんが、時間はわずかに使うのです。
こちらは、その間を待っていませんでした。
ここが、笑ってしまうところでした。
あれほど苦労して「進んでいるなら何分でも待つ」を入れたのに、その辛抱強さは、ページを開くまでの話だったのです。
ボタンを押したあとだけは、相変わらずせっかちなままでした。
3分でも待てる機械が、最後の1秒だけ、待てていませんでした。

しかも、この待てなさは、新しい世代のページでだけ、はっきり表に出ました。
これまで扱っていたページは、押せばすぐ画面が変わるものがほとんどでしたから、困りごととして見えていなかったのです。
新しい600社を入れたことで、初めて表に出ました。
直し方は、拍子抜けするほど簡単でした。
押したあとにも、開くときと同じ辛抱を持たせる。
待つ、といっても、いつまでも待つわけではありません。
押したあと、3つのうちどれかが起きるまで見ています。
- 画面が別のページに変わる。
- 画面のどこかに、完了を知らせる文字が出る。
- 入力した欄が、いっせいに空になる。
どれか1つでも起きれば、そこで終わりです。
何も起きないまま、動きが完全に止まったときだけ、諦めます。
この直しを入れただけで、扉の内側で止まっていた分が、まとまって動きました。
もう1つ、この回で分かったことがあります。
押したあとに何が起きるかは、サイトによってばらばらです。
別のページに移るところ。
同じページの上のほうに、小さく1行出るだけのところ。
画面がいったん元に戻るところ。
こちらは、そのうちの1つしか知りませんでした。
この話は、もう少しあとで、もっと大きな形になって戻ってきます。
このときは、目の前の1つを直しただけで満足しました。
押したあとに待つようにしたので、「押しても何も起きない」は減りました。減ったので、それで終わりにしました。
残っていた別の型のことは、このときには数えてすらいません。
■ 見立ては正しくても、最後まで通すには「もうひと手間」が要る
あとで振り返ると、ここで1度、押したあとに何が起きるかを全部数えておくべきでした。
数えるのは半日で済んだはずです。
数えなかったために、同じところへ、何週間かあとに戻ってくることになります。
結果として、600社の扉は、おおむね開きました。
ただし、1度で開いたわけではありません。
開けて、もう1枚あって、それも開けた、というだけの話です。

現場への報告は、正直に書きました。
「見立ては合っていました。ただ、もう一段ありました」
「それ、最初から分かってたら苦労しないよね」
そのとおりです。
開けてみるまで、分かりませんでした。
この回のあと、報告の書き方を1つ決めました。
- 増えた数だけを書くのは、やめる。
- 思っていたより増えなかったときは、そう書く。
良い報告だけを並べていると、悪い報告が出せなくなります。
出せなくなると、直せなくなります。
この回で書いておきたいのは、そこです。
見立ては、正しくても、そのままでは効かないことがある。
正しい見立てを最後まで通すには、たいてい、もうひと手間が要ります。
そのひと手間は、開けてみるまで分かりません。
もし結果が伸びなかったとしても、この話は、そのまま書くつもりでした。
伸びなかった理由のほうが、たぶん面白いからです。
隠さないことだけが、この記録の値打ちだと思っています。
実際、この回で得たものは、増えた数そのものより、最後の1秒の話でした。
600社の扉は、いつか誰かが開けたと思います。
あれだけ大きな塊ですから、そのうち気づきます。
押したあとの1秒は、そうではありません。
新しい扉を開けたからこそ、表に出ました。
開けなければ、たぶん、ずっと隠れたままでした。
1つ動かすと、隠れていたものが1つ出てくる。
これまでも、何度かそういうことがありました。
次に隠れていたものは、こちらの記録の中ではなく、相手の郵便受けの中にありました。
(つづく)
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