💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

リード枯渇を防ぐマスターデータ構築。579万社のインデックス生成と差分更新

営業の相談を受けると、だいたい同じ話になります。
いまのお客様リストを、そろそろ使い切りました。
新しい会社を探したい。けれど、どこから探せばいいのか分からない。
これは、営業の力の問題ではありません。
会えていない会社が、世の中にどれだけあるのかを、知る方法が無かっただけです。
手元のリストは、これまで出会った会社の記録です。
出会っていない会社は、そこに載りません。
リストを使い切るというのは、これまでの出会いを使い切った、ということです。そこから先は、記録の外を探すことになります。
地図の無い場所を、勘で歩くことになります。
名簿を買う、という手はあります。
展示会で名刺をいただく、という手もあります。
どちらも、悪くありません。
ただ、条件を指定して探すことは、できません。
日本には、法人の情報を公開している仕組みがあります。
会社を作ると、番号が振られます。その番号と、名前と、所在地が、誰でも見られる形で公開されています。
さらに別の仕組みで、その会社の従業員数や、設立年や、どんな認定を受けているか、といった情報も公開されています。
これらは、こちらが集めたものではありません。
国が公開しているものです。
私たちは、これを取り込んで、突き合わせて、検索できる形に整えました。
その件数が――約579万社。
取り込む作業自体は、地道なものでした。
公開されているデータは、検索しやすい形にはなっていません。
そのまま置いておくと、1件を探すだけで時間がかかります。
だから、索引を作ります。
名前で探せるように。地域で探せるように。
条件を組み合わせても待たされないように。
そして、更新があるたびに、差分だけを取り込む仕組みも用意しました。
毎回すべてを入れ直すと、その間、検索できない時間が生まれます。
第8話で学んだことが、ここで効いています。
レスポンス性能が「仮説検証サイクル」を回す。ターゲットセグメンテーションの可視化

この機能を作るとき、最初に時間をかけたのは、速さでした。
579万件の中から、条件で絞り込む。条件を1つ変えるたびに、件数が変わる。
その反応が遅いと、誰も条件を触りません。
1回の検索に十数秒かかるなら、人は、最初に思いついた条件で決めてしまいます。すぐ返ってくるなら、何度でも試します。
試す回数は、そのまま、仮説を捨てられる回数です。
速さは、機能そのものではありません。
その機能が、実際に使われるかどうかを決めるものでした。
579万という数字は、それ自体では役に立ちません。
多すぎるからです。
営業が1日に連絡できる会社の数は、限られています。
100社かもしれない。30社かもしれない。
579万は、その日には関係のない数字です。
だから、この機能で大事なのは、件数ではありませんでした。
減らし方のほうでした。
条件を、いくつも組み合わせられるようにしました。
地域。業種。設立からの年数。従業員の規模。特定の認定を受けているかどうか。指定するたびに、件数がその場で変わります。
579万が、数十万になり、数千になり、数百になる。
その数百が、明日の仕事です。
そして、その数百は、毎回同じである必要もありません。
条件を変えれば、別の数百が出てきます。
一度使い切ったら終わり、という性質のものではない。
そこが、買った名簿との大きな違いでした。
名簿は、減っていくものです。
条件は、育っていくものでした。
条件を選んでいると、自分が何を探しているのかが、だんだんはっきりしてきます。これは、機能を作ってみて分かったことでした。
「どういう会社に売れるのか」を、言葉で説明できる人は、実はそれほど多くありません。けれど、条件を触っていると、出てきます。
この地域は違う。
この規模だと、話が通らない。
この認定を持っている会社なら、こちらの話が刺さる。
条件は、そのまま仮説の形をしています。
そして、仮説は検証できます。
この条件で選んだ会社に連絡して、どれだけ反応があったか。
別の条件で選んだ会社と比べて、どうだったか。
条件を記録しておけば、あとから比べられます。
比べられるようにしておくと、「なんとなく」で選んでいた作業が、少しずつ、根拠のある作業に変わっていきます。
この機能でいちばん時間をかけたのは、検索の速さではなく、この記録の部分でした。
シームレスなCRM連携とアウトバウンドの根拠。データガバナンスにおける鮮度管理の徹底

条件の中には、組み合わせて初めて意味を持つものがあります。
地域だけでは、多すぎます。
業種だけでも、多すぎます。
地域と業種と規模を重ねて、はじめて、連絡する意味のある数になります。
そして、その重ね方には、会社ごとの正解があります。
こちらが用意できるのは、重ねられる仕組みまでです。
どう重ねるかは、その会社が決めます。
条件で絞り込んだ会社は、そのまま自社のデータへ取り込めます。
取り込めば、他の会社と同じように扱えます。
担当者を決める。連絡した記録を残す。フォームへ文面を届ける。反応を見る。
つまり、探すところから、その後の活動までが、1つの流れの中に入ります。以前は、ここが切れていました。
探すのは別のツール、記録するのは別のツール。
あいだは、書き出して、貼り付けて、手で埋める。
その手間が消えたことのほうが、579万という数字より、日々の役に立っています。
この機能で、ひとつ気をつけたことがあります。
見込み客を「発掘」と呼ぶとき、掘り出す側の都合しか入っていません。こちらが勝手に選んで、勝手に連絡する。それだけなら、迷惑になり得ます。
だから、条件を残すようにしました。
なぜこの会社を選んだのか。
どういう条件で絞り込んだリストなのか。
その記録があると、連絡の内容が変わります。
「たまたま名簿にあったので」ではなく、「こういう会社に、こういう理由でお声がけしています」と言える。
言えるかどうかは、相手にとって、かなり大きな違いです。
もうひとつ、気をつけたことがあります。
公開されているデータは、そのまま使えば正しい、というものではありません。会社は、変わります。
所在地が変わる。事業をやめる。名前が変わる。
公開されているデータにも、時差があります。
だから、その情報がいつの時点のものなのかを、必ず一緒に持つようにしました。
古い情報を、古いと分かる形で見せる。
これは、後の回で出てくる
データの鮮度の話につながっていきます。
バニティメトリクス(虚栄の指標)の排除。579万のビッグデータを「アクショナブルデータ」へ昇華する

この話には、失敗が出てきません。
作って、動いて、役に立っている機能の話です。
ただ、作っているあいだ、ずっと気にしていたことがあります。
件数を売り文句にしないこと。
579万社という数字は、たしかに大きい。
資料に書けば、目を引きます。
けれど、大きい数字が立派にするのは、こちらの資料のほうです。
その数字でお客様が得をすることは、ありません。
得をするのは、579万の中から、明日連絡する30社を選べたときだけです。
だから、画面に大きく出しているのは、全体の件数ではありません。
いま選ばれている件数のほうです。
条件を1つ足すたびに、その数字が変わります。
多すぎれば、絞る。少なすぎれば、緩める。
その繰り返しの中で、自分の売り先が、少しずつ言葉になっていきます。
ツールにできるのは、そこまででした。そこから先は、連絡する人の仕事です。
探すことより、探した理由を説明できるリストを作ること。
579万社は、その理由を選ぶための材料でした。
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次回予告
第20話「同じ会社を、同じ会社と見抜く」
株式会社が前に付くか、後ろに付くか。
ビル名が入っているか、いないか。
人なら一目で分かることを、
機械に教える話です。
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リストルは、今日もどこかを直しています。
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