💡Listoru(リストル)は、Web上の情報から企業の営業リストを自動で収集・作成するツールです。
この「企業DB開発日誌」では、数ある機能の裏側に隠された、私たちの試行錯誤を綴っていきます。
エラー画面には出ない問題や、データとの静かな対話から見えてきたもの。
正解のない開発現場のリアルな空気を、少しだけおすそ分けさせてください。
今日もリストルの裏側で起きた、ひとつの物語をお届けします。

目次
- 直したはずの画面が変わらない
- 「よくある原因」と偶然の成功が招いた迷路
- 問題を小さく見せ、作業を重くする「回避策」の代償
- 偶然見つけた真犯人。ブラウザは指示に従っていただけだった
- 同じ原因を2回疑ったら、3回目は「外」を見る
直したはずの画面が変わらない

この話は、大きな数字が出てきません。
被害額も、件数も、出せません。
それでも書いておきたかったのは、失った時間が、いちばん長かった件だからです。
直すこと自体は、数分で終わりました。
その数分に、何か月もかかった話です。
画面の見た目を決めるファイルがあります。
文字の大きさ、余白の取り方、色、線の細さ。
そういう指定だけを集めたものです。
このファイルを直せば、画面の見た目が変わります。
本来は、それだけの話です。
ある時期から、変わらなくなりました。
直す。アップする。開く。
前のままです。
何度やっても、前のまま。
最初に疑ったのは、自分たちの手順でした。
アップする場所を間違えているのではないか。
別のファイルを直しているのではないか。
確認しました。合っています。
サーバーの中を直接のぞくと、アップした新しい内容が、ちゃんと入っています。
ファイルは、新しい。
画面は、古い。
置いてあるファイルは、新しい。
出てくる画面だけ、古いまま。
あいだのどこかに、原因がある。
その「あいだ」に何があるのかを、こちらは全部は知りませんでした。
「よくある原因」と偶然の成功が招いた迷路

次に疑ったのは、ブラウザでした。
見た目のファイルは、毎回読み直すと遅くなるので、ブラウザが手元に控えを持っています。
同じものなら、読みにいかずに、控えを使う。
そういう仕組みです。
この控えが古いままなら、画面も古いまま。辻褄が合います。
控えを消しました。
別のブラウザで開きました。
誰も使ったことのない状態で開きました。
古いままでした。
それでも私たちは、しばらくブラウザを疑い続けました。
理由は単純です。
「よくある話」だからです。
見た目が反映されないときは、まず控えを疑う。
そう教わりますし、実際、たいていはそれで直ります。
いちばんよくある原因は、いちばん長く疑ってしまう原因でもありました。
しかも、途中で一度だけ、直ったことがありました。
何をしても変わらなかったのに、ある日、修正が反映された。
理由は分かりません。それでも、直ったので、そのときは安心しました。
そして、しばらくしてまた戻りました。
一度でも直ってしまうと、「やり方の問題だ」という考えが強くなります。
正しい手順を踏めば直るはずだ、と。
外れた仮説は、疑いの線を1本消してくれます。
偶然の成功は、消えかけていた線を、また太くします。
消したはずの線を、何度もなぞり直していました。
偶然の成功は、調査をいちばん遠回りさせるものでした。
問題を小さく見せ、作業を重くする「回避策」の代償
お客様から見れば、この期間、画面の細かい改善が、ほとんど届いていません。
こちらは直しているつもりでした。
届いていない、という自覚もありませんでした。
画面が崩れた、という連絡は来ません。
前と同じ画面が、出続けているだけだからです。
何かが起きる不具合より、何も起きない不具合のほうが、静かに長引きました。
見た目の修正は、たいてい小さなものです。
文字がわずかに詰まっている。
ボタンの位置が揃っていない。
スマートフォンで見たときに、はみ出している。
1つずつは、小さい。
小さいものが直らない状態が続くと、道具全体の印象が、少しずつ古びます。この状態が、何か月も続きました。

そのあいだ、私たちは回り道をしていました。
見た目の指定を、別ファイルにせず、画面そのものの中に直接書き込む。
こうすると、確実に反映されます。
控えの入り込む余地がないからです。
急ぎの修正は、それで通しました。
通してしまったので、根本を調べる理由が減りました。
回避策は、問題を小さく見せます。
小さく見えるものは、後回しになります。
そして、回避策には代償がありました。
見た目の指定を画面の中に直接書くと、同じ指定が、いくつもの画面に散らばります。1か所を変えたいときに、何か所も直すことになる。
直し忘れた画面だけ、古い見た目のまま残る。
読み込む量も増えます。
本来1回で済むものを、画面ごとに運ぶことになるからです。
急ぎのときの回避策が、そのまま、日々の作業を重くしていました。
偶然見つけた真犯人。ブラウザは指示に従っていただけだった
きっかけは、別件でした。
サーバーの設定を確認する用事があり、関係のない項目を上から順に見ていたときです。ファイルの渡し方に関する項目が、目に入りました。
探していたわけではありません。
たまたま、そこにありました。
目当てとは別の項目の前で、手が止まりました。
書かれている内容が、この数か月の症状と同じ形をしていたからです。

原因は、こちらの外にありました。
サーバー側に、ファイルの渡し方を決める設定があります。
この設定は、本来ありがたいものです。同じファイルを何度も読み直さずに済むので、画面の表示が速くなります。
速さのための設定が、更新を届かなくしていました。
この種類のファイルは、しばらく控えを使ってよい。
このファイルは、毎回読み直させる。
そういう指示を、渡すときに一緒に付けられます。
その設定が、意図しない形になっていました。
つまり、ブラウザは悪くなかった。
ブラウザは、言われたとおりにしていただけです。
「しばらく控えを使ってよい」と言われた側は、そのとおり、控えを使い続けます。
こちらがどれだけ新しいファイルを置いても、使ってよいと言われている限り、読みにきません。
確認は、すぐに終わりました。
設定を変えて、ファイルを1つ置き直して、開く。
その場で、変わりました。
何か月も動かなかったものが、数分で動きました。
設定を直したら、直りました。
その日から、見た目の修正は、アップした瞬間に反映されるようになりました。
同じ原因を2回疑ったら、3回目は「外」を見る
いまは、画面の中に直接書いていた指定を、少しずつファイル側へ戻しています。
戻せるようになったこと自体が、直った証拠です。
この件で残ったのは、時間の感覚です。
原因を直すのにかかった時間は、ごくわずかでした。
たどりつくまでに、何か月もかかりました。
差は、技術ではありません。
疑う順番です。
私たちは、よくある原因から順に疑いました。
それは正しいやり方です。効率がいい。
ただ、よくある原因を疑ったあと、「違った」という結果を、きちんと受け取っていませんでした。
控えを消しても直らなかった時点で、ブラウザの線は消えていたのです。消えたはずの線を、なんとなく残したまま、回避策で日々をしのいでいました。
いま、私たちはこう考えるようにしています。
同じ原因を2回疑ったら、その線は終わり。
3回目は、外を見る。
外を見る、というのは、自分たちが書いていない部分を見る、という意味です。
サーバーの設定。
通り道に立っている仕組み。
利用しているサービスの決まりごと。
自分たちが書いた部分は、いくらでも読めます。
読めるので、つい、そこばかり読みます。
読める場所を探し続けるのは、落とし物を明るいところだけで探すのと同じでした。
もうひとつ、変えたことがあります。
回避策を入れるときは、必ず、元の問題を残すようにしました。
回避策は、症状を消します。症状が消えると、記憶からも消えます。
消えないように、書いておく。
それだけのことですが、これが無かったために、何か月も、直っていない状態が続きました。

直ったあと、少し不思議な感覚がありました。
何か月分の回避策が、急に不要になったからです。
その回避策を書いた時間も、反映されないことを前提に段取りしていた時間も、全部、本来は要らなかった時間でした。
積み重なった手間は、原因が消えた瞬間に、まとめて消えます。
疑う順番を間違えると、何か月も遠回りします。
そのあいだ、直っていないことにさえ、慣れてしまいます。
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次回予告
第12話「更新できないツール」
お客様の手元にある道具を、新しくする。
そのための仕組みが、動かなくなりました。
エラーは、1つも出ませんでした。
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リストルは、今日もどこかを直しています。
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